• ホーム
  • 運動訓練・日常動作訓練

運動訓練・日常動作訓練

運動訓練

運動訓練には、量的なものと質的なものがあります。

  • 量的な運動訓練

量的な運動訓練とは、筋肉の量を増やして筋力をつけるような一般的な 筋力トレーニングです。足に負荷をかけた状態で伸ばしてもらったり 腹筋運動やうでの筋力トレーニングなどを指します。
加齢や運動不足による筋力低下、寝たきりの方の筋萎縮防止に対して行われます。

  • 質的な運動訓練

質的な運動訓練とは各関節を個別に動かしたり、指を順番に折り曲げたりといった「意図した動作」を行うことにより神経と筋肉をうまく協調させるような訓練をいいます。
例えば、運動の協調性を調節する小脳が萎縮してくると, ぎこちない動きが見られるようになります。筋力は十分あるのですが「意図した動作」ができにくくなってしまいます。

また、脳梗塞後遺症等による痙性麻痺のある方は、ある一つの関節を曲げたり、伸ばしたりすることができなくなります。(共同運動)例えば、歩行時に股関節が伸びると、膝や足首の関節まで伸びてしまい、足全体を外に振り回しながら歩くようになります。そういった場合に、いくら量的に筋力を増強しても反って痙性麻痺までも誘発してしまい動きの質が悪くなってしまう場合があります。その場合には、足関節や膝関節を動かさないように固定した状態で股関節だけを動かしてもらうといったような質的な運動訓練が必要になってきます。

日常動作訓練

寝返り、起き上がり、座位保持、立ち上がり、立位保持、歩行などの基本動作がスムーズに行なわれるように訓練していきます。
各動作には、それぞれ大事ないくつかの動作遂行のための要素が存在しています。
動作を観察しながらどの要素が出来ていないか、なぜ出来ないのかを推察していきます。筋力が足りないのか、関節が硬くなって邪魔をしているのか、運動の巧緻性が失われているのか、麻痺や運動失調が妨げているのか、動作のポイントが欠けているのか、をチェックしてその原因を取り除いていきます。

  • 寝返り訓練

~寝返り動作は手足や体幹を曲げることによって動作が行われます。
股関節や膝関節を曲げる腸腰筋や大腿二頭筋、体幹を曲げる腹筋、肩関節を屈曲する三角筋や大胸筋などの動きが必要になってきます。

  • 起き上がり訓練

~ベッドからの起き上がり動作は、寝返り動作の延長線上で行われます。
寝返りを行った後、ベッドから足を降ろします。足を降ろした時の「てこの作用」を利用して上体を手や肘を使って起こします。足をベッドから降ろす腸腰筋や上体を起こす腹筋、それを補助する手の筋肉などの動きが必要になってきます。

  • 立ち上がり訓練

~ベッドからの立ち上がり動作は、股関節を使って上体を前屈みにすることにより行われます。つまりいきなり上方へ立ち上がるのではなく、一度前屈みになり重心を前下方に移します。そのために必要なことは、股関節や足関節の可動域が十分確保されていること。その後、下肢や体幹を伸ばす筋力が必要になってきます。
座面の固さや床からの高さ、地面に置いている足の位置なども影響してきます。

やわら在宅マッサージが重要視する筋肉

  • 大殿筋・大腿二頭筋

~おしりやふともものふくらみを構成する筋肉です。
おしりやふとももの裏側の筋肉は立ち上がったり、歩いたり、階段を上ったりする時に使われます。これらの筋肉は座位時に常に圧迫された状態になるため、血液の循環が悪くなりがちです。
マッサージやストレッチによってこれらの筋肉をほぐして血液の流れを良くします。十分に筋肉に栄養や酸素を供給した後に筋力訓練を行います。おしりやふとももの裏側の筋力訓練は股関節を中心とした運動になります。

  • 大腿四頭筋

~ふとももの前側のふくらみを構成する筋肉です。
この筋肉は立位時や歩行時に膝関節を安定させます。
また人体の中で最も大きな筋肉であるため、この筋肉をマッサージすると脳へ大きな刺激を与えることができます。よってその後の運動訓練ではマッサージ前と比べると動きが良くなることがあります。膝を伸ばす運動になります。

  • 下腿三頭筋・前脛骨筋

~ふくろはぎと足のすねのふくらみを構成する筋肉です。
これらの筋肉は立位時に体の微妙な揺れに対して足首の位置で身体が倒れないように調節してくれています。これらの筋肉を鍛えることによって立位の安定性を高めることができます。
なお股関節の位置で歩行の安定性を高めてくれる筋肉は中殿筋という筋肉で片足立ちになった時に身体が左右にぶれないように支えてくれています。
また足のすねの筋肉は足のつま先を持ち上げる作用があり、この筋肉が衰えると段差などに躓いたりすることが多くなります。ふくはぎの筋肉はつま先で地面を蹴って歩く時に作用します。歩行の安定にはかかせない重要な筋肉と言えるでしょう。
これらの筋肉は座位や立位にて踵やつま先を上げる訓練を行います。

  • 足底筋

~足のうらの筋肉です。
足の指を動かしたり、地面からの衝撃に対して緩衝する作用をもっています。しっかり足の指で地面を掴んで歩き、また接地面として様々な役割を担っている筋肉です。
足の指でじゃんけん運動(ぐー、ちょき、ぱー)をしたり、タオルを引きよせたりする運動を行います。

  • 大胸筋

~胸のふくらみを構成する筋肉です。(乳房は脂肪組織となります。) 硬くなると肩が前に張り出し背中を丸くします。(円背)
また車椅子に座っている時など、腕を肘かけで支えずに前に垂らした状態が長く続くと大胸筋が硬くなります。
時々は姿勢を見直して胸を張ったり、肘かけを利用するなどしてこの筋肉が縮むのを防いでください。

  • 菱形筋

~肩甲骨を背骨側に引き寄せる筋肉です。
ここに力が入っていないとやはり肩甲骨が外側に広がり背中が丸くなります。
背筋を伸ばすことを意識して肩甲骨を内側に引き寄せましょう。

  • 脊柱起立筋

~背中のふくらみを構成する筋肉です。
身体が前に倒れないように支えています。
前屈みの状態で重い荷物などを持つと、この筋肉を痛めて背部痛や腰痛の原因となります。
立位や歩行時に身体が前屈みにならないように頑張ってくれる筋肉です。

  • 腹筋

~おなかの筋肉です。
膝を曲げた仰向けの状態で、枕から頭を少し浮かせるだけでこの筋肉が働きます。ベッドから起き上がる時や寝返りする時に重要な筋肉となります。
日頃患者様を見ていて、ベッド上の動きがいいなと思った時は、たいてい腹筋がうまく働いている場合が多いように思います。寝返りや起き上がり動作は体幹の屈曲動作がとても重要な要素となっているからです。

【参考文献】

「スポーツマッサージ」 道和書院
「理学療法士のための運動療法」金原出版
「標準 理学療法学 臨床動作分析」医学書院
「トリガーポイントマニュアル」エンタプライズ
「図解関節・運動器の機能解剖 上下巻」協同医書出版社
「柔軟性トレーニング」大修館書店
「steps to follow ボバース概念にもとづく片麻痺の治療法」シュプリンガー・ジャパン
「新・徒手筋力検査法」協同医書出版社
「カパンディ 関節の生理学 上肢・下肢・体幹・脊柱」医歯薬出版株式会社